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記事No 6137
タイトル Re: シリンダーゲージでの計測方法 (長いです)
投稿日 : 2011/08/03(Wed) 18:44:35
投稿者 ねぎのリーダー@管理人
参照先 http://www.neginoleader.com
金ちゃんさんコチラではお久しぶりでございます〜

と、デイトナボア改も早速組まれたみたいですね。
…ちと作製に時間が掛かってしまい申し訳ありません(汗


さてさて、とりあえず始動して熱を入れてる最中という事で。
元々は小走行の中古ベース品とはいえ、きっちりホーニングしたシリンダー内面が
中古ピストンの相手になるので、ある程度はじっくりと馴染ませてやって下さいな。


> MJ100、SJ50、JN中段、エアスクリュー1回転半戻しでエンジンは
> かかりましたが、暖気後アイドリングからアクセル開け始めでもたつきがありました。
> その後エアスクリューを締め込む毎にアクセルのツキが良くなり、結局目一杯締め込む
> ハメになってしまいました・・・

で、気になるのがコチラなんですが(汗
キャブはデイトナPE24という事ですが、いくらなんでもスロージェット50番をセットし
その上でエアスクリューを全閉にするまで濃い目に振っていけるとなれば、
デイトナキット特有と言いますか、スロットルバルブの番手の不適合が大きく出て
いる可能性が大きいです。

4.5番や5番が入っているとこうなりがちで、モノにもよりますがスクーター用の
PEキットだと何故か無茶苦茶な番手が入っている事があるので、特にボアアップ
仕様で吸入負圧が大きくなっている場合、スロットルバルブの番手が高いと
アクセルを大きく、速く開けた時には一気にエアが吸い込まれてしまい、辻褄を
合わせようとすればどんどんスロージェットがでかくなる傾向になってしまいます。

MJの番手とのバランスを鑑みてもそこまでいくと明らかなる異常でして、おそらく
このままジェットのみの変更を行っていては、いつまで経ってもキャブセットの
勉強にはならないと思います…

分かりやすい所で、吸気系がほぼ同等で排気量のみが異なっていると言っても
良い、ヤマハのJOGの50と90であれば、同一キャブでも50だとスロットルバルブが
3番なのに対し、90だとハナから2.5番が標準装備されていたりしますね。


これは正直、そんなバランスの悪いスロットルバルブをセットしているデイトナ側に
元凶があるのですが、私も大昔にこれでかなり悩んで多量のジェットを買ってしまい
原因が分かった時にはPEそのものが大嫌いになってしまいましたから。

これも、私個人としてはPEをあまりお奨めしない理由なんですね。
スロットルバルブを買っても5000円近くしますし、このキャブにそれだけのコストを
掛ける価値はあるのか、という事で…
別売りスロットルバルブやジェット類を必要以上に多量に買わせたいのかと思えて
なりませんね。
PWKの様に調整範囲が良い意味で大きいのならともかく、出荷時セッティングにて
高価なスロットルバルブが的外れすぎ、というのが解せないです。

この件、あまり大きな声では言いたくなかったのですが今の時代ならもう言っても
良いでしょう、と思います(笑


と、いきなり話が飛びましたが本題へ(汗


> ごめんなさい・・・えーっ本題ですが
> 装着前にシリンダーとピストンの計測を試みましたが、特にシリンダーゲージがシビアで
> 計測方法に誤りが無いかご教授願います。

早速シリンダーボア径を計測されているのですね。
が、これは最初に断っておきますが、絶対的数値を把握しようとすれば温度管理も
含め、本来は職人さんが行う計測なので、私も自己流+人様から学んだLVでの
組み合わせのやり口である、という事をご理解下さいな。


> @45mmのアンビルに3mmのワッシャーを入れ、マスターリングが無いのでダイヤルゲージでゼロ校正しました。

えと、これは書き間違いだと思いますがダイヤルゲージの0点合わせに使ったのは
「マイクロメーター」ですよね?
マスターリングなんて高価なものは私も持ってませんので、マイクロの幅に合わせて
シリンダーゲージに挿したダイヤルゲージの0点を合わせますよ。


> Aシリンダー内径上部を4〜5箇所測定し平均を取りました。
> Bシリンダー内径下部を4〜5箇所測定し平均を取りました。

内径の測定箇所は、4〜5箇所であれば十分だと思いますよ。
それに加え、私は上中下段に分けて測ります。

なお、シリンダースリーブ部分が薄いシリンダーや、中古品だとスリーブ下部は
どうしても「前後方向」へ広がっている事が多いので、実測の平均値を出すには
あまりに「劣化や仕様限度で広い点」というのは平均値の勘定に入れない方が
良い場合もあったりしますね。

それと、ポート開口部はどうしても測定子が当てられないので計測不能な部分も
出てきますが、そういった場合は開口部の直上や直下を利用して上手い事
測れる部分を見つけるのがミソです。
…2stのシリンダーってのは本当に測りにくいものだな、というのはありますが(汗


> C計測結果はシリンダー内径上部と下部双方共、48.034mmとなりました。

こちら、手元のデータではホーニングに出す前に測定した数値で「48.014o」と
なっていますから、全体的な真円度を出す為に削ると2/100程度は内径が
広がっているかと思われます。

私自身、ホーニング後には計測していないのですが、私がホーニング前に実際に
測っている数値から+側に大きくなっている、という事であれば、お互いの計測が
そこまでおかしくない、という事の証明にもなりますよ(笑


ちなみに1000分単位は実際の「寸法把握」には四捨五入すべきでして、一応の
1000分台の目盛りは読んで表記はしますが、実用での数値となれば計測値が
48.014oなら「48.01o」と把握して、100分台での把握をすべきです。

ノギスとかもそうですが、こういった計測器具ってヤツは「計測出来る目盛りの1桁上」を
実数値として誤差も含めて把握するのが基本ですし、我々の様なアマチュア計測だと
決して「最少の目盛り」まで正確に読み取ろう、などといった事は考えてはいけません。

最少目盛りはあくまで「目安」であり、鵜呑みにする物では無いという事です。
これはお忘れなき様にご留意願います。
(マイクロメーターだと目盛りの無い部分を読む物ではありますが)


分かりやすく表現しますと、ピストンクリアランスで「100分台」の数値が欲しい場合、
コンマ01までしか測れないノギスでシリンダー内径やピストン外径を測ったとしても、
それであてになるのは「コンマ1」単位ですから、「このシリンダーは48.1oでピストンは
48.0oだ」といった計測値しか出ないので全く意味がありません、といった感じですね。

逆に、温度変化もふまえるとピストンクリアランス把握にて1000分台数値を必要以上に
気にしてもほとんど意味がありません(笑


> D懸念される事項として、室温20℃の維持が難しく24℃での計測となってしまいました。

次にコチラですが、これが一番難関と言っても良いでしょうね。
私もかなり困る点の一つでもあります(泣

基本、手袋を着用した上被測定物の温度は20℃に近づけるのが鉄則ですが、
夏場は冷蔵庫、冬場はストーブやホットカーペット等を利用し、被測定物全体の
温度を出来る限り20℃に近づく様に工夫すべきです。
マイクロメーターなら、マイクロメーター自体に手の温度が伝わらない様に計測に
時間が掛かる場合は出来るだけスタンドを利用するのも良いでしょう。
(とはいえ、4℃位なら誤差の範囲でもOKだと思います)

鋳鉄ならともかく、アルミのピストンだと熱膨張率は結構影響を受けますが、これも
一般的なピストンであれば純アルミではなく多少は混じり物があり、純アルミよりは
熱膨張しづらかったりしますが…これはエンジンパーツとして当然だったり。

社外品とかでは純正と違い、ぴっかぴかのいかにもアルミです!みたいな材質の
ピストンもありますが、ああいうのだと見た目だけでアルミに対しての混じり物が
少なく、同じ温度を与えると熱膨張率が高くなっているのは一目瞭然なので、
そういったブツであれば純正よりは余計に温度変化に気を遣わねばなりません。
…イコール、実際のエンジン稼動時にも熱膨張が大きいという事になるんですが(笑


実際の熱膨張率は純アルミであれば「0.000023」といった様に係数がありまして、
それらを「線膨張率」の計算に当てはめればある程度はどの位の温度で寸法が
どの位変わるかは計算でも出るのですが、ややこしいので今日はちょっとだけ。

あくまで一つの参考としてですが、分かりやすくピストンの外径を計測する場合で、
材質はほぼ純アルミ製だと仮定し、線膨張係数の公式を当てはめれば下記の様に
なります。

----------------------------------------------------
・膨張量=外径×線膨張係数×(加熱温度−室温)

・10℃でピストン外径(前後長)39.95φの状態

熱膨張係数20℃〜100℃まで 0.000023

仮に30℃まで加熱した場合 (+20℃)

39.95x0.000023x(30-10)=0.018377o
39.95+0.018377=39.968377o
----------------------------------------------------

こんな感じに寸法変化が起こります。

で、実測だと5℃で39.929oのピストンが30℃で39.950oになった、と
いった計測データがあったので参考までにどうぞ。
このブツだと25℃の温度差で0.021o程膨張している訳です。
冷蔵庫の中と真夏の常温だとコンマ2も差が出るんですね。

鉄系統の材質だと 熱膨張率は0.000012と低いですから、シリンダーの場合は
もうちょっと寸法変化は緩やかになりますしピストン程はシビアにならずとも
OK、という事も言えます。

言葉を返せば、シリンダー内径をシリンダゲージで計測するよりもピストンの
各部寸法を正確に把握する方が難しいんですよね。


かくいう私も、ピストン計測だとかなり神経を使いますし、一定条件の測定温度を
こしらえても、可能な限り同一条件での計測をまた別の日に改めて行ったりして
誤差やミスを防いでいます。

と言いますか、線膨張の計算式で全てが合ってるのかと問われると100%の
自信はありませんし、純アルミでは無いピストンの膨張率や鋳鉄シリンダーの
膨張率もモノによって多少は異なるはずですから、「運用時に実際にこの位の
熱膨張が起こりそうだからこの位にしよう」といったピストンプロフィール等を
加味したピストンクリアランス設定になると、数値の把握が大前提とした上で
さらに経験とノウハウも必要になるんですね。


> 少しでも手元が狂うと、針が振れてしまうので正確に測れたかかなり怪しいフシがあります。
> ちなみにシリンダーゲージは 35〜60 TAKACHIHOです。

シリンダーゲージの使い方ですが、これは慣れです、としか言えないですね(汗
とはいえ、円筒部分に突っ込むのですから、アンビルに対して90°の角度の
方向にはあまりズレは出ないでしょう。
と言いますかそれがズレるとシリンダー内壁が円では無いという事に(笑

大切なのは「アンビルに対して手前&奥側に倒す」方向にゲージを振ってみて、
一番数値が高い所を読み取るという感じでしょうか。
…ちょっと言葉では説明しづらいですよねこれってば(汗

ゲージそのものはアンビルの劣化等はともかく、寸法を設定したマイクロメーターに
対してダイヤルゲージの0点をしっかり取れれば良いのでそこまでシビアになる
必要は無いと思いますが、マイクロメーター基準であればマイクロメーター本体は
基準器を使ってマメに校正してやらないといけませんね。


そして最後に。
ピストンとシリンダーの測定を行う場合、ピストンクリアランスの目安を取るのが一番の
目的になりますが、これってですね、「自身の道具を使って同一条件で計測する」と
いった場合であれば、「絶対的数値」ではなく「相対的数値」でも構わないんですよ。

仮に、私と金ちゃんさんが同じピストンとシリンダーを「自分の道具同士」で計測して、
双方に計測誤差が出たとしましょう。

・私=シリンダー内径48.000
・金ちゃんさん=シリンダー内径48.010

となった場合であれば、あくまで双方には相対的に「0.01o」の差がある事になります。


次に、2人がまた自身の道具にて、そのシリンダーに合わせるピストンを測ったとします。

・私=ピストン外径47.950
・金ちゃんさん=ピストン外径47.960

と、こうなったとします。

…これはあくまで仮の数値ですが、こちらも0.01oだけ双方に「ズレ」があるといった
事になるのですが、こうなるとどちらかが、もしくは両者共に計測機器に絶対的な
ズレがあるはずです。

しかし、この場合だと絶対的な数値としてはどちらも間違っていたとしても、ここで
重要なのは「ピストンクリアランス」、すなわち「ピストンとシリンダーの寸法差」の
数値ですから、金ちゃんさんの計測器具が私の物より0.01oだけ大きな数値を
指す様に狂っていたとしても、相対的に見れば両方のピストン&シリンダーの
クリアランス値ってどちらも5/100で変わらないんですよね(笑

こういった計測器具の特性上、意外とこんな感じのズレになる事が多く、プロの方で
あれば「この物体は何oだ!」という事を間違えてはいけないので実測では絶対的な
数値が出せないといけませんが、根本的にマイクロメーターが狂っているだけだと
「全体的に計測数値がズレる」のであり、「10o点と20o点までのストロークが異なる」と
いう事はなかなかありえない、と私は認識しています。


…なんかどんどん難しい話になっていますが、クランクシャフトのベアリング挿入点の
様に、規格品で絶対数値のあるベアリング内径に対してこの位大きくないといけない、と
いった場合でもなければ、多少のズレは許容出来る上にピストンクリアランスの把握に
関しては問題無くいける、という事ですね。

とはいえ、計測器具の校正や温度管理も全て含め、絶対的数値をどんな状態でも
出せるのはやはりプロであり職人さんなので、この辺りに関しては一般的な
人間だとかなりの隔たりがある物だ、と認識して精進しないといけませんね。
これも「道具があれば測れる」モノではありませんから、理屈を頭で考えた上で
手もしっかり動かさないといけませんし、私もこの辺はまだまだですよ(笑

ただ、2人が同一のパーツを同一温度で測ってみて、双方で0.02以上も差が
あったりすると、さすがにどっちかがおかしいかな、と思える位だと私は認識して
います。



何か書いているウチに無茶苦茶長くなりましたが…
正直、頭の中にあるこれらの理屈を人様にご説明したのって初めてかも(笑

要点は省いても、そこそこの精密計測というものはこういうものなのだ、と考えて
頂けますと幸いです。
私ごときがこんな事言って良いのかどうかは悩むところですが、職人さんな方々の
レスも期待してみたい所ですよ(汗


> イ〜キさんの質問レスでの、ベルトかかり径の計測方法ですが
> とても参考になりました。他の方との質問のやり取りからも
> 学ぶ事が多いです。リーダー様、イ〜キさんありがとうございます。

最後にコチラですが、お役に立てて頂けそうで嬉しいですよ。
これ、駆動系コンテンツの中にちょろっとは忍ばせているんですが、実際には
ドライブ側ベルトかかり径の限界というものを判断するのにはかなり応用が効く上、
社外だろうが純正だろうが車種を問わずに使える手法なので是非お役立て下さいな。
もちろん、ドライブ側のベルトかかり径だけをクリアしてもそれでオールOKとは
行きませんが。

…ちなみに私のこしらえる加工プーリーだと説明書もどきにこの手法が書かれてたり(以下略


ではでは。
管理人でした〜

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