ライブディオ大好きさんお久しぶりでございます。 最近レス遅れ気味で申し訳ありません(汗
さてさて、ライブDio系のボアアップキットについて、という事ですが… いつもながら私見ではちと厳しい意見になるかと思いますがご容赦をば。
> リーダーさんライブディオのボアアップのお勧めとかはありますか?
お奨め、となれば正直市販品ボルトオンレベルではありません、と断言しますね。 エンジンとして最低限度のバランスと言いますか、…常識的な排気、掃気の タイミングおよび圧縮比、ピストンクリアランス等が真っ当なレベルで取れていると いった物は、少なくとも私は見た事がありませんので。
例えば、排気タイミングはかなり早くて高回転にパワーバンドが移行するが、 排気ポートの弦長は狭すぎてパワーが出ず、掃気タイミングは遅すぎて 効率が悪く、ヘッドでの圧縮比は当然ノーマル以下、という感じだとか。
これだとピークパワー発生回転数が上がるものの、そこのパワー自体は ノーマルと比べてもほぼ変わらず、ピーキーにはなるのでドッカン感は出ても 実際にはもっさりしたパワー感、圧縮比も低い為に全体的にメリハリがなく、 オイルや慣らしをどうやろうが、ピストンクリアランスが不適切な為焼き付きの 不安はパワーが出ていないくせに付いて回る、という、もはや何がやりたいか 分からないうんこパーツなんてザラにあります、というのが私の見解ですね。
> 台湾性のボアアップキットはパワーは純正よりも少しだけあるのですが、エンジンのフィーリングがモッサリしていて乗っていて楽しくないのです。
これは、基本的に2stエンジンでは排気量がそれなりに上がっていれば、 パワーバンド内の力強さが上がらずとも、パワーバンドより「下」では それなりにノーマルよりはマシになりますが、だからといって全開加速を 行った時、パワーバンド内で変速させていてもその時点でのパワーが ノーマル同等かそれ以下、レベルでは楽しくもなんとも無いでしょうね。
…と言いますか、排気量を2割とか3割とか上げていて、「ノーマルより 少しだけパワーアップ」なのであれば、純正シリンダー等を加工修正して その「少し」を上回る事は簡単に出来る、という(笑
> 純正シリンダーは低回転普段はスカスカでパワーバンドに入った途端にドカンとパワーがでるなかなかスポーティーな味付けだと感じます。低回転は普段使わないので気にならないですけどね。
これは2stである以上、原付一種であればどのメーカーの味付けもさして 変わらないと言いますか、小排気量かつ2stで、パワーバンド以下のパワーを それなりに出す、なんてのは物理的に不可能だからなんですよ。 例外として、ヤマハ3YK等の横型エンジンは一次圧縮効率の良さにより 適当なチューンをしても下が無くならないといった特殊性もあったり。
このあたりはフルノーマルであれば、メーカー側がそのピーキーさを極力 感じさせない様な駆動系セットを施してきていますから、これらに関しては 無難なバランス、という意味では純正メーカーは凄いセッティング能力だなあ、と 私は考えてますね〜
> ならば純正シリンダーをボアアップしたらどうなるのか?とか気になったのですが、ポートの位置が変わったりそう簡単なものでもないようですね。
そうですね、これはもともとのポート位置の「付き方」や通路自体の 曲がり具合にも大きく左右される為、一概には言えませんがおおむね、 ボーリングの場合は全てのポートが下がり、タイミングが遅くなるのが 基本なので、元々純正値でもパワーを出すには遅めのタイミングとなって いる排気ポートなんかは、正直ボーリングのみではどうにもならないレベルに なってしまいがちです(汗
排気ポートの「弦長」も、ライブDio系ですと元々40φシリンダーの70%近くの 弦長を持っていますが、これを仮に45φまでボーリングすればその45φに 大して70%の弦長が必須となりますし、これが元から出来ているボアアップの キット物なんて私は見た事ありません。
かつ、ライブDio系だと掃気タイミングも遅い為、ちょっと許容出来ない所まで タイミングが遅くなる上、2oとかボーリングすると掃気ポートの吹き出し角度が かなり変化する為、デチューンどころかデンジャラスな方向に向いてしまいます。
当然のごとく、ボーリングボアアップであれば何oのボーリングであれば 各ポートの位置関係が何o下がるかをざっと考えておき、下がった分は加工で なんとか出来る範囲なのかを考慮し、出来ないならばシリンダーベースに プレートを入れてかさ上げし、上面をカットするとかの手段も取りますし。
各ポートタイミングは計算しつつ角度で出せないといけませんし、それが 出来た上でボーリング後の加工修正が現実的に出来、許容範囲になりそうだ、 となって初めてやってみる価値が出る物ですね。
それと、シリンダーヘッドでの圧縮比も、ノーマルが7.1:1なのであれば少なくとも これと同等にはなる様に圧縮比計算を行い、シリンダーヘッド等の容積も 決めて加工しないといけませんし、効率よいパワーの為にはヘッド自体は 圧縮比が合っていればOKという物でも無いので、スキッシュエリア角度の ピストン肩角度との整合性や、上死点時のその部位の距離、「スキッシュ クリアランス」とかも考慮した設計が必須です。
ノーマルヘッドの様に、ほぼ効率無視で圧縮比だけ合っていればよく、かつ スキッシュクリアランスはガバガバといった状態であればほとんど何も考えて いなくとも他の所の不整合でボン、という事はまずありえませんが、シリンダー等 各所が変わったのであればそれにあわせた辻褄は全ての事に対して必須で ある、と言えるでしょう。
> 純正シリンダーのボアアップ経験などももしあれば話が聞きたいです。
そして純正ボーリングボアアップという手段は何車種かのパターンでやった 経験はありますが、前述の様な辻褄をきちんと合わせていく事が一番大事と 言いますか、それが出来ないならボアアップする意味がほとんどない為に リスクやランニングコストのみを高め、もわっとしたパワー感だけが得られる 満足感のみ、となってしまいますのでね…
当然、社外品の不整合点を分析し、それをまともに近づける修正を行う方が ボーリングボアアップよりははるかに難易度は低いですが、それでも こういっては何ですが、仮にチューニングの中級者レベルではなんとかなる様な 難易度では無いでしょう、と言えます。
> 形状を調べるとaf27系のピストンと互換性があるようで少なめな排気量であればaf27ボアアップとして売られている43Φのピストンが入るかもしれないなどと考えておりました。
確かに、AF18系の43φ社外ピストンであればピストンピン径は同じ12φですが、 ピン上寸法がライブDio系とはかなり異なってきます。 当然、ピストンのピン上がシリンダー上面より突出する場合、それに対する 辻褄を合わせるにはシリンダーをかさ上げしたりしないといけませんが、それで 各ポートタイミングは狙った所に収められるのか、というのがまず一つ。
次に、流用ピストンにおいて「リングの合口部」の位置がとても大切で、 リングの合口部というのは第2と第3掃気ポートの間に位置していまして、これも AF18系とAF34系の構成では純正でかなり異なっています。
他車でも、ピストン流用の場合はこれが一番の問題になり、これが合わないと 合口が掃気ポート開口部のギリギリを通るとかでは不味いですし、実際には AF18系と34系の場合、ボーリングしても合口部が現実的に収まる範囲には 来ません、というのがあったりしますね…
そして、ピン下寸法もあまりにも異なっていた場合、下死点時にクランクウェブに ピストン下端が接触する可能性もあります。 この場合だと、ある程度であればピストンの下側をカットして回避する事も ありますが、あまりにもピン上に対してピン下が短くなると耐久性的な不安も 出てくるので、許容範囲はあるものですね。
最後に、社外品のピストンだとピストンそのものの材質や、リングのしなやかさ等に 問題があるものもあり、仮に3φボーリングかつ排気弦長70%の運用では、 リングが排気ポートに飛び込みがちになる、といったケースも考えなくては なりませんし、台湾系ピストンの場合はリングが炭素鋼に近い材質っぽいので、 国産リングの様に柔軟性がなく、折れる時は一気に折れるといったパターンも あったりしますし…ピストンに関してもピン穴周辺の強度が足りておらず、 運用上でクラックが入る、といった場合もありますからね。
このあたり、と言いますかざっと羅列したこれらの点でも、まだ最低限度レベルの 「エンジンとしての構造分析と流用の可否」といった設計段階のお話なので、 単純に流用ピストンでボーリングボアアップ、なんてのはかなり難しい物である、と いった事はご理解頂けるかなと思います…
> また、マロッシが良いとかといった話も聞きますが、なにが良いかなど調べても情報がなかなかでてこないですね。」
マロッシってたまに仕様変更するので一概には言えないのですが、私の経験上では 排気ポートはボア径の62%程度しかなく、排気タイミングはBBDC95°近くあって ちょっと早すぎるかなと。 そして各部掃気は形状はまあまあですが、タイミングは元々遅いライブDio系の ノーマルと変わらないレベルでした。
ヘッドは当時のモデルには付いてませんでしたが、仮に純正ヘッドをポンと 乗せると整合性もクソもなく、その時点での圧縮比は当然ノーマル以下、といった タダで貰ってもそのまま使うのはイヤだ、といった低レベルの品でしたよ。
ピストンクリアランスも広くは無いですが、私なら安全の為に一度内燃機屋に クリアランス指定のホーニングに出しますし、これの数値を決めるのはピストンの 上の方と下の方の寸法差がどれくらいあるとか、材質が熱膨張しやすそうだとか、 色々考慮して決めないといけないので一律これが良い、ってのもありません。
当時はこれが40000円とかで売られていましたが、それだけのコストをかけるなら ボーリングボアアップ加工でもなんとか出来そうな予算になりますしね(笑
で、何が良いのかといった情報が無い、といった点についてはですね、これは そんな情報なんて無くて当然なんですよ。 何故かと言えば、そんな良い物なんて「市販品のポン付けキット」では一切合切 この世に存在していないから、という至極単純な理由になります。
これって、原付二種のノーマルエンジンを、各部修正で「排気量なり」の パワーを出せる様にした場合だと、正直ノーマルとは比較にならない位の パワー感を生み出せるのですが、原付一種ベースで排気量を上げる、となれば せめてそれ位の激変とパワーアップはあってしかるべきなんですが。
現実として、それを実現できているアフターパーツメーカーは無い、というだけです。 もちろん、チューニング屋とかレース屋とかできっちり仕上げてくるのを旨としている SHOPとかだと話は別ですが、大手メーカーの場合はパワーアップさせすぎると つまらないトラブルでのクレームも多くなるでしょうから、やりたくても出来ないという 面は確実にあると私は分析していますしね(泣
…いつものクチですが、私自身もそういった社外品メーカーキットで想像した様な 結果を得られていれば、今の様にあれこれ勉強したり自分でチューニングを 手掛ける様にはなっていなかっただろう、というオチですよ。
> 何だかんだで、ライブディオが当時人気が出たのは純正シリンダーのスポーティーでレスポンスの良い味付けが要因の1つなのではと感じており、
うーん、これは私の分析はちょっと異なってます。 ライブDio自体、当時快速であったヤマハ3YK型エンジンにかなり似せてきた設計に しているんですが、それまでのAF05〜AF28までのノウハウをすべて捨てた上での 新設計ですから、正直それが当たったかどうか、となればあまり当たらなかったんです。
何故かと言いますと、ライブDio系はシリンダーや腰下でエンジンパワーを稼いで いるのではなく、ノーマルマフラーのチャンバーとしての性能をかなり上げており、 そこでスペック上での7.2psエンジン、といった感じにしている設計なので。
3YKの場合、チャンバーを変更していってもかなり素直に特性変更が出来、かつ パワーも出せるんですがライブDio系の場合、それがかなり難しいです。 仮に両者共にチャンバーのみの変更でパワーアップさせろ、となったら私では 絶対に3YKJOGに勝てるライブDioを作る事は出来ない、と言い切れますし。
なので、ライブDio系でチャンバーのみの変更でパワーアップさせろ、というのは かなり難しいチューンになりますし、正直ノーマルマフラーのままでピークが 上げられずとも、他をなんとかしてパワーアップに繋げる方がはるかに効率が良いと いうのが、AF34Eエンジンパッケージの正体なんですよ。
おっしゃる様な、シリンダー単体であれば正直、構造としては前モデルである AF18系の方がはるかに優れており、レーシングエンジン的な掃気通路の 形状や角度はピカイチで、これは他のメーカーやモデルの追随を許しません。 その位、AF18系シリンダーは変更がしづらい掃気通路の構造が良く、これは 3YKでもライブDioでもかなわない点である、という事が挙げられますね。
なので、はっきり申しますがライブDio系エンジンはハイチューン向けではなく、 私もやった事がありますが縦型シリンダーの掃気効率を得る為に、リード90の シリンダー等を加工装着するのが流行ったりしたのはそのあたりに大きな 理由があったりもするんですよ。 こういっては何ですが、AF34Eってのは私から見ると駄作…とまでは言いたくは ありませんが、良いエンジンでは無いです_| ̄|○
>その味付けをスポイルしないボアアップができないかと考えているところです。
これはですね、排気量を上げた分パワーを出し、それに加えて50tのままの 様なフィーリングとレスポンスを付与すれば良い、という事なのであれば、 前述した様に、各部の整合性をきちんと取るだけでそれは簡単に出来る、と 言いますか…世の中にはそれが出来てすらいないキット物しかない、と 言うだけなんですよね。
なので、結論だけを申しますと社外品ポン付けや、加工がどうこうで絶対に無理、 それが出来る人が修正した、もしくはこしらえたボアアップを使うしか、そういった 特性を得る事は出来ないでしょう。
手前味噌ですが、私はそれがある程度出来ると自負しておりますし、世の中の パーツやチューナー等のあれこれもそれなりに知った上でモノを発言して おりますのでよろしくです。
このあたりは、加工や修正が出来るかどうかとか、良い内燃機屋さんを知っているとか そういう問題ではなく、物事をきちんと分析し、それをどうすれば良いのかの設計を 現物合わせではなくきちんとこなせるのかどうか、という点が一番大切ですので… このあたりが、圧力ゲージ測定とか全円分度器前提という手法をあまり好まない 理由の一つでもあります。
…こればかりは「きちんとしたボアアップ仕様」というのに乗った事が無いと、イメージすら 沸かないですし、市販キット物がいかにもっさりなのか、という事も分からないですから。 ある程度の経験も必要な面もありますから、かなり難しい物ではありますしね。
後、最後にちょっとだけアドバイスですが、ボーリングボアアップ前提であれば、 まだ絶版ではないと思いますがキタコの45φなんていかがでしょうか。 キタコのピストンは材質はそれなりで、リングはリケン製なのでかなりしなやかで 耐久性もある為、想定外の負荷をかける為のボーリングボアアップには結構 向いていると私は思いますよ。
ただし、当然ですが各部の辻褄合わせは必須ですが、あくまでボーリング用の ピストンとしてはベースとして考える事が少なめで済む、という事なので 参考までにどうぞ。
ではでは。いつもながらかなり長くなってしまいましたが、参考になれば幸いです。 管理人でした〜
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