[記事リスト] [返信する] [新着記事] [過去ログ] [ワード検索] [留意事項] [管理用]

記事No 8246
タイトル Re: ホンダ縦型エンジンについて
投稿日 : 2023/04/18(Tue) 23:07:58
投稿者 ねぎのリーダー@管理人   <neginoleader@yahoo.co.jp>
参照先
縦型人間さん初めまして。
当HP管理人のねぎのリーダーでございます。

さてさて…スクーターいじりの初心者さんという事で、ご経験談を読ませて頂きましたが
なんともはや、何度も腰上を壊してしまっているご様子ですね(泣
しかし、こういうのはある意味仕方の無い事でして…いつもながら辛口ではありますが
一つ一つレスさせて頂きます。


> AF18E細軸にKNアルミボア78ccを投入しまして慣らし運転を行いました。8500回転程で留めていたのですが少し駆動系をいじくり、軽く9000回転回るように設定しました。
> 24パイキャブ、メインジェットは120+パワージェット、混合比1/75というかなりオイルを絞った状態でしたので3分程全開走行にてシリンダー、ピストン共にご臨終。
> それに加えてサークリップ、ピストンピンが安易には抜けなかったためにAF24Eのケースに交換しました。

まず、社外品の78tシリンダーを投入されたのですね。
こちら…私は詳細な寸法等は存じませんが、「各部の寸法や状態」を何も調整せずに慣らしを
行っても、はっきり言ってほぼ意味が無く、セッティングがどうこうのレベルでは無い「製品」であると
いった点はご留意下さいな。

この手のパーツは、ポン付けであれこれやってもまともな「排気量なり」のパワーが出て、
安定運用出来るなんて事はほぼありえず、特にKN企画製品だと説明書等にも明記されて
いますが、「各部の辻褄合わせ等を自身でやる人が用いる"ベース品"」ですしね。

後、3分もの全開走行となればかなりの高負荷になりますが…こういった場合だと真っ当に
エンジンをこしらえてもそんな長時間「持つ」というのは難しいですよ。
少なくとも、排気量で言えばノーマルの1.6倍近くになっていますが、その状態を多少の
オイル量UPだけで「持たせる」事が出来るのか、といえばまず不可能でしょう。

後、混合比が「1/75」とありますがこれはどういう意味でしょうか(汗
もし1000tのガソリンに対して1/75のオイル量という事なら…13.3ccですのでヤバいです。


> クランクケースは割っていないのですが見ただけでも嵌め合いが悪いクランクケースでしたが兎にも角にも早くオモチャを手に入れたかったのでそのまま載せて新品アルミ78cc、WRを純正程の重さにして慣らし運転を行っていました。

うーん、AF18系腰下だともはや30年物ですし、嵌め合いが良いとか悪いとかではなく
もはや今の時代、そのままでノーマル以上の高負荷運用なんて自殺行為だと私は感じます。

当サイト内にも色々記述はありますが、ものによってはベースエンジンとしての「古さ」が
今の時代程ではなかった感覚で記している記述も多いです。
例の一つとしては、15年落ちエンジンでも走行は10000km以下、といった感じであり、
今の時代の様に30年経っていて3万qとか走り続けている、といった物とは全くもって
基準となる「中古」の意味合いが異なる、といった点はご注意下さいな。


> ある時、リーダーさんのページで「オイル管理をしっかりして軽く抱かせて磨く」というものを思い出し、混合比1:20でWR半分、9000回転まで回してモ゛ッとさせてみました。案の定ピストンリングの切り欠き部分が縦にうっすらと傷がありましたので(後談あります)、ペーパーで磨き再度組み込み、そこから150キロほど6500回転以下での慣らし運転を行いました。この頃は8000回転までの慣らしをしていたのですが下り坂により8500程回ってしまい、その時にも軽い抱きつきのようになりました。

これは先に結論を記してしまい申し訳ありませんが、この理論はあくまで
「エンジンとして各部のバランスや精度、色々な物がそれなりにきっちり出来ている」と
いった場合の社外品が大前提となります。

仮に、ピストンクリアランスが適切な品でも、最初から高負荷を与えてしまっては
不味い場合もある為、ある程度のリスクを承知の上であれば一度軽くアタリを取る、と
いった意味合いなので、元々の精度や特性が無茶苦茶な物ではこれをやったとしても
ピストンクリアランスがガバッガバな状態にならねば安定してきませんので…

言葉を返せば、「何をやっても焼き付かない位、ピストンクリアランス20/100位」に
なるまでピストン側を削り続けないといけない、という事ですね。


次に色々な検証へ対して、個人的見解を述べさせて頂きますね。

> まずこれまでの慣らし運転中あったことをまとめると
> 1.AF24Eの走行中ハンドルにリズミカルな振動が伝わってくる
> →クランクのブレ、ベアリング死亡と考えました

振動、となれば腰下の可能性は高いですが…もしも腰下が原因でそこまでの
ハンドルへの振動が出る程だと、クランクベアリングが死んでなくともクランクシャフトを
目視で見ても分かる位、曲がってしまっていると思いますよ。

ご存じかと思いますが、ホンダ2stスクーターのクランクシャフトは材質的にかなり
柔らかく、駆動系の脱着をミスった程度でもあっさりとシャフトが曲がってしまい、
再起不能レベルになります。
(※クランクベアリングは確かに強い方ではありませんが、シャフトはもっともっと貧弱です)

特に、中古エンジンだとクランクシャフトの状態なんてのはもはや真っ当なはずがなく、
一度、補器類を外してフライホイールを手で回しつつ、駆動系側のシャフト自体の振れを
確認してみる事をお奨めしますよ。


> 2.抱きつき慣らしを行った際、抱きついた瞬間にパンッと失火したような音が聞こえた
> →経験がなく理解が出来ませんでした。。

これはどこかがロックしたり破壊されたりすると、失火減少が出るのは正解ですね。
と言いますか、壊れ具合によってはおとなしくスローダウンするとは限らない為、
全開高負荷時はいつでも身構えておいた方が良いです(汗


> 3.8500回転を超えると何故か抱きつく。
> →もうオイルなのかケースが悪いのかさっぱりです。

オイルはですね、まず混合比の計算が正確では無いのかな、と感じます。
純正オイルポンプの吐出量は混合比に換算するとおおむね40:1程度、すなわち
ガソリン1リッターに対して25tのオイルを喰っている、という事になります。

純正の原付二種だともっともっとオイルは多く、25:1〜30:1程度なので、
もちろんメーカーさんはマージンを取ってはいますが、50tではなく78tならば
オイル量が純正の1.6倍あってもおかしくはない、とも考えられますよね。

なお、強制空冷であるが故、エンジン回転数が高いとそれだけ冷却風量も増えますが、
シリンダー側のフィンが小さかったりしてもダメですし、ホンダ純正のクーリングファンは
そこまで風量が高い物では無い為、排気量が78tもあるならば6000rpm程度でも
怖いのでは、と私は感じますね。


次に、ケースですがこれはまずありえない、と言っても良いでしょう。
二次エアを吸いまくりだとか、クランクベアリングが破損していてミリ単位でシャフトが
暴れているとかであれば腰上の焼き付きの要因にもなりえますが、通常レベルの劣化で
あれば、ダイレクトに腰上の破壊に繋がる様な要因はまずありません。

いくらクランクシャフトがブレていても、シールが弱っていても、ケースの精度が悪くとも
それが腰上を破壊する、というのはライトチューンでは私は経験した事がありません。


> 4.朝イチ始動で走行しているとノーマルスクーターのようにリミッターがかかっているかのようなフケの悪さが6800~7200回転の間でたまに起きる
> →気温の変化???

こちらは、少なくとも純正とかけ離れたエンジンやキャブにおいて、冷間時の安定間を
しっかりと出す、という事はまず不可能です。
アクセルの開け方やスローの調整でも変わりますし、リミッターが掛かったかの様な
症状となればあからさまにおかしいのだと推測しますが、それでもキャブなのか点火なのか、
もしくは腰上が根本的に悪いのか、各部の劣化なのか…いくらでも要因は考えられますね。

言葉が悪いですが、そういった点をおかしく感じ、追及したいのであれば各部の消耗や
劣化具合は、完璧なまでに修理が出来ていないと考えるだけ時間の無駄です。

オイルポンプ取り付け部のOリングが劣化していて2次エアを吸っているかもしれませんし、
キャブやマニの接合部、クランクオイルシールの左右はどうでしょうか?
そういった点が完璧に維持されていて初めて、「セットや社外パーツにおける不具合」を
考えて行ける物ですからね。

30年前のエンジンで、いじくったらおかしい点が出る、なんて誰がやっても当たり前の
事ですし、特に原付一種という乗り物は経年劣化や過走行に対してはとんでもなく
弱い物なので、そういった点をきっちり改善して行かないと「ノーマル以上の性能」なんて
求めるべくもない、といった点はご注意下さいな。


> ちなみに抱きつき慣らしを行った後に圧縮を計った時9.8ほどありました。
> 情報として必要かは分かりませんがお伝えします

これはゲージ計測値でしょうか?
申し訳ありませんが当方は、圧力計測値をチューニングの指標とはしておりません。
ですので数値を問われても何も言えませんのでご留意下さい。
はっきり申しますが、そのKN78tをベースに色々なチューンを施した上で、適宜圧力を
計測している様な占有チューナーでもない限り、圧力値は指標にはなりません。

…ノーマル状態ではいくつの圧力値で、ボアアップだとどれ位の変化があり、
それを「どの部位が影響して変わったか」が分かる位で無いと全く意味が無いでしょう。
なので、私は各部の計測&計算で出せる「圧縮比」を旨としておりますね。

もっとはっきり申しますが、素人計測の圧力値でボアアップのセッティング、なんて
無謀極まりないですし、時間の無駄なので止めた方が宜しいかと思います。


> 玄人さんのやっていることを見様見真似でやっていることは間違っていることもあるかもしれません、ただやってみないと分からないことも多いですし、失敗をそのままにしたくないので素人ながらも頑張りたいと思っております。どうかご教授よろしくお願いします。

私はメカニズムに対してのご質問に関しては、一切妥協しませんのでどうしても辛口に
なりますし、道理が決まっているメカに無に対して忖度しても誰も得をしませんので…
あくまで文体での物言いがきつい点はどうかご容赦頂きたく思います。

そして、今回の様なパターンという物は私自身、何人も見てきましたしこういった
サイト等での質問は何度も何度もお受けしてきました。


それをふまえての結論なのでどうかじっくりお読み頂きたく思いますが…
まず、「社外品ボアアップキット」という物は、そのままポンで組んで運用したところで、
まともに走ってセッティングを楽しめる様には「元々」設計されていません。

これは昔からなんですが、2stエンジンは構造はシンプルで部品点数は少ないですが、
その少ない部品点数の中で、様々な動作や作用を起こしているんですね。

なので、はっきり言いますが「社外品のボアアップキット」なんて大抵はゴミレベルだ、と
いう事なんですよ。
縦型人間さんが何度もトラブルを起こしているのは、もちろん知識や経験値の差による
点もありますが、それ以前に「まともに運用出来る腰上パーツを使っていない」のです。

これまた言葉が悪いですが、縦型人間さんの文章を拝見しておりますと、ご自身の
手法や運用に対しての疑問はお持ちの様ですが、肝心のボアアップキットに対しては
一切の不具合や不信感が無いと見えます。


それが、それこそが元凶とも言って良い物でして、いくら慣らしを頑張ったとしても
ピストンクリアランスがピストンの熱膨張に対して元々不適切な為、どれだけ削っても
高負荷をかけるとそれ以上に熱膨張が起こり、焼き付いてしまうというだけです。

もちろん、ピストンクリアランスだけが問題ではありませんが…2stエンジン腰上が真っ当に
動作出来る、少なくともノーマルと同レベルの各部バランスを取る為に必要な点、
具体的には

・ピストンクリアランス
・ピストンの材質、形状(※見た目レベルではなく)
・ピストンリングの材質、寸法、しなやかさ等
・各部ポートタイミング
・各部ポート形状
・シリンダー全体における圧縮比
・シリンダーヘッドにおける燃焼室の具合
ets…

こういった点が「全て」許容範囲もしくは、純正の出来に近しい物になっていない限り、
見た目の排気量だけが大きくても、78tあってもきっちりした60t仕様ににはるかに
劣る上に耐久性、信頼性も皆無に等しい、といった物しか出来上がらないです。

近年はそういった点を考慮してパーツを使う方もめっきり減りましたし、無茶苦茶をやって
結果だけ出たらそれでOK、的な風潮もあるかなと私は感じてますが…
2stエンジンはナメてかかって上手く行くものでは無い上、経年劣化したエンジンに対して
あれこれやっても好結果は出なくて当然、という事は言うまでもありませんね。


本来は、こういった「いじくって楽しみたい」といった方に対しては、ある程度は安心感の
出せるレベルのモノづくりと、各部バランスの取れたパーツの設計、というものが必須で、
それが「商品」として存在するのが一番理想なんですが。
「ユーザーがいくら頑張っても楽しめるレベルですらない」なんてのはお金取るレベルでは
ありませんし、チューニングパーツですから保証があるものではありませんが可能な限り
楽しめる様な物を売るべきだろう、と私はずーっと思ってますよ。

残念ですが、私の長いスクーターいじりの経験でも、そういったパーツを提供出来る
メーカー、ショップというのはごくごく一部である、というのが現実ですのでね。
(…だからこそ私自身がそれを目指した、というのはあります)

安価な大量生産品でそこそこ高性能、そこそこ壊れないなんて夢物語ですし、
安くて良い物なんてこういったメカニズムの世界には存在しない、というのが
世の常なので…

と、長くなってしまいましたが。
結論を一言で言うなればポン付けボアアップなんてゴミばっかりです、という事で。


> ps.夢は100キロオーバーのディオを作ることです!

なるほど、その志は凄くよろしいかと思いますし是非実現に向けて頑張って頂きたいです。
が、その目標値を目指すならば、純正の変速比とファイナル比を鑑みた上で、エンジンの
回転数がいくつまで乗ればその数値に届くか、といった点を試算しておく事をお奨めします。

仮に、78tエンジンならばファイナルギヤがノーマルではフロントリフトしまくって危ない、と
言ったレベルが「普通」でないとおかしいですし、原付二種車のファイナルギヤは純正で
いくつになっているのか、といった点も「必須」の知識となるのでご留意をば。


ではでは、何か不明瞭な点があれば遠慮なくご指摘下さいませ。
では今回はこれにて失礼をば。
管理人でした〜

- 関連一覧ツリー (■ をクリックするとツリーを一括表示します)


- 返信フォーム (この記事に返信する場合は下記フォームから投稿して下さい)
おなまえ
Eメール
タイトル
メッセージ
参照先
画像UP
暗証キー (英数字で8文字以内)
投稿キー (右画像の数字を入力) 投稿キー


- 投稿記事修正/削除フォーム -
処理 No 暗証キー

- WebForum -